睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症(SAS: Sleep Apnea Syndrome)

夜間睡眠中に反復して呼吸停止、あるいは呼吸低下の起るもので、夜間睡眠が慢性的に妨げられるため、朝起床時に爽快感が乏しく、日中強い眠気や全身倦怠感が毎日のように起こり、社会生活が妨げられる病気です。終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)では、(1)睡眠潜時が短縮し、 (2)睡眠時に10秒以上(通常20~50秒)持続する呼吸停止または浅い呼吸のエピソードが一時間当り5回以上反復し、無呼吸に伴って覚醒反応が頻回に起こります。(3)無呼吸に伴い動脈血酸素飽和度の低下が反復して生じ、このため頭痛、口渇、右心不全、高血圧などが合併しやすくなります。中年の肥満男性に多く、年齢が進むにつれて増加しますが、閉経後の女性では、SASの有病率が男性と同程度に上昇することが知られています。亜型分類として肥満や扁桃腺肥大などによる上気道狭窄により胸郭の呼吸運動はあるものの鼻腔からの換気が停止し、覚醒反応により苦悶様の激しいいびきを繰り返す閉塞型と、胸郭の呼吸運動が起らないで呼吸停止が反復する中枢型と、両者の混合した混合型が区別されていますが、相互の移行もあります。また完全な呼吸停止には至らず、換気が低下するため頻回の覚醒反応が起こる上気道閉塞症候群もみられます。

原因と発症の要因

  • 太っていてあごや首に脂肪がついている
  • アデノイドなどの病気により、扁桃が肥大している
  • 花粉症やアレルギーなどで、鼻が詰まりやすい
  • アゴが小さい
  • アルコールの摂取により筋肉がゆるんで、のどがふさがりやすくなる

一般には太った人に多い病気ですが、日本人など東アジア系の人種ではやせていてもアゴが小さいなどの顔の特徴から、睡眠時無呼吸症候群(SAS)にかかる人が多くみられます。

治療

  • 減量
  • 生活習慣の指導
  • CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)
  • 口腔内装置
  • 手術治療

睡眠時無呼吸症候群(SAS)が軽症の場合は、減量や生活習慣だけで症状が改善することがあります。しかし中等度・重症の方では、ひどい眠気のために気力が低下し、減量や生活習慣改善にもなかなか前向きにとりくむことができません。 1時間に20回以上の無呼吸や低呼吸がみられる中等症・重症の患者さんでは、睡眠中に持続的に圧を加えて気道を広げるCPAP装置による治療が、健康保険で受けられます。これは体への負担が少ない、有効な治療法です。

中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんには、経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal-CPAP療法)が第一選択とされています。CPAP療法は、睡眠中に鼻にマスクをつけて装置から一定の陽圧をかけ、無呼吸やいびきなどの原因となる上気道の狭くなった部分を押し広げて呼吸を確保する治療法です。患者さんによっては口と鼻を覆うマスクを使用することもあります。
CPAP療法は装置を使用している間だけ効果があり、数日間つけなければ気道は元の状態に戻ってしまうため、できるだけ毎日使用していただく必要があります。CPAPは体への侵襲がなく、使用することで多くの人は使ったその日からいびきをかかなくなり、無呼吸が改善します。朝もスッキリ目覚めることができるようになり、日中の異常な眠気が改善し、事故などのリスクも軽減します。また睡眠時無呼吸症候群の方では、高血圧や糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞など合併症が起こりやすいことが知られています。無治療の重症の睡眠時無呼吸を放置すると、10年後の死亡率は50%に上るものの、CPAP療法を行うことにより一般健常人と同程度まで死亡率を下げられるという報告もあります。

当院のCPAP機器はレンタルとなっており、機器には使用状況のデータが記録されています。当院受診の際には、CPAP機器のデータカードをお持ちいただき、ご自宅でのCPAP使用状況などを患者様に分かりやすく説明しています。(機器によっては自動的にデータを送信するものもあり、この場合はデータカードをお持ちいただく必要はありません。)

中等症以上の睡眠時無呼吸症候群は、そのままにおくと高血圧、不整脈、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などを引き起こすおそれがあります。また、睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の眠気から交通事故を起こす危険もあり、早期の受診・検査と適切な治療をおすすめします。

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