概日リズム睡眠障害

概日リズム睡眠障害

私たちの体には「体内時計」が備わっており、この時計の働きで毎日決まった時刻に様々なホルモンが分泌され、睡眠と覚醒を繰り返すという「体のリズム」が生まれます。
体内時計の周期は24時間より1時間程度長いため、私たちは毎日、体内時計を地球の24時間のリズムに合わせながら生活しています。体内時計の中心は脳の視交叉上核にあり、同調因子としては光の役割が大きく、朝の時間帯に光を浴びると、リズムの位相は前に動き、夜の時間帯に光を浴びると、リズムの位相は後ろに動きます。また体内時計は、脳だけでなく、筋肉や各臓器にも存在し、内臓にある時計が生み出すリズムは、食事の時刻によって変わることがわかっています。 睡眠の経過や質には異常はないものの、長期間の生活習慣などにより、体内時計に位相のズレを生じ、本来望ましい時間帯に睡眠が取れなくなることがあります。その結果、夜間眠るべき時間帯に不眠を、昼間の覚醒すべき時間帯に過眠、集中力低下、全身倦怠感などを生じ、長期間にわたり社会生活や日常生活上の苦痛や支障が起ります。これを「概日リズム睡眠障害」と呼びます。

概日リズム睡眠障害には次のようなタイプがあります。

交代勤務型

常に勤務時間帯が変化(夜勤と日勤)することにより体内時計と勤務スケジュールが合わないために生じる病態です。

睡眠相後退型(睡眠相後退症候群)

生活が夜型になり、深夜に強い光を浴びることにより、体内時計が乱れて睡眠が遅い時間帯にずれてしまう、10代から発症し長期化することも多い病態です。明け方近くまで寝つけず、いったん眠ると昼過ぎまで目が覚めないという状態に陥り、無理をして起床すると、眠気や強い倦怠感などの症状がみられます。

睡眠相前進型(睡眠相前進症候群)

日中の活動性の低下や極端な早寝などの生活習慣などより、体内時計が乱れて、睡眠が早い時間帯のほうにずれてしまう病態です。夕方から眠くなり、起きていられず、逆に早朝に目が覚めてしまいます。高齢者に多く、家族性に発生することもあります。

自由継続型(非24時間概日リズム睡眠障害)

体内時計が朝の光によってリセットされず、寝つく時間、起きる時間が毎日1~2時間ずつ遅れていく病態です。全盲の方に多くみられ、不登校や引きこもり、長期休暇などで若年者が長期間の昼夜逆転した生活を送った後に、引き続いて出現することがあります。

不規則睡眠-覚醒型

睡眠と覚醒の出現が昼夜を問わず不規則になる病態で、夜間の不眠や、日中の眠気、昼寝の増加などがみられます。脳梗塞などで体内時計のリセット機構が弱くなった状態や、身体疾患のため臥床生活を余儀なくされるなど、社会的接触の少ない環境におかれた場合に生じやすいことが知られています。

治療法として、薬物療法、高照度光照射療法、生活指導などがあります。

薬物療法では、睡眠相を固定するために、メラトニン作動薬(ラメルテオン)やビタミンB12製剤(メコバラミン)を使用します。また入眠時間を固定するために、短時間作用型の睡眠導入剤を用いることがあります。

高照度光照射療法は、朝の一定の時間帯に、2500ルクス以上の光を2時間以上浴びることにより、体内時計をリセットすることを目的として行います。

このほか睡眠記録表やアクチグラフで睡眠の状況を長期間記録して、病態を自覚し、動機づけを高めて、睡眠覚醒リズムの固定を図ります。一般には薬物療法、高照度光療法を併用しながら、一定の時間に予定をいれるなど社会的同調因子を利用して睡眠時間帯を固定します。また睡眠時間帯を後ろにずらして行き、昼夜の再逆転を図る場合もあります。

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