月経前症候群

月経前症候群(Pre-Mmenstrual Syndrome, PMS)と月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder, PMDD)

月経前症候群(PMS) は月経の3~10日前より現れる不快な症状で、月経が始まると同時、あるいは数日中にすっと症状がなくなるのが特徴です。以前はイライラなどの精神症状が主と思われていたので、「月経前緊張症」と呼ばれていましたが、体の症状のみを感じる人も多いため「月経前症候群」という名前に変わりました。軽いものも含めると月経のある女性の6割以上にみられると言われています。

体の症状

乳房緊満感・腫脹・疼痛,腹部膨満感,頭痛,関節痛・筋肉痛,体重増加,四肢の腫脹・浮腫

心の症状

抑うつ気分,怒りの爆発,易刺激性・いらだち,不安,混乱,社会的引きこもり

対処方法

栄養バランスの良い食事

  • 甘い物の摂取をひかえる→血糖値の変動による疲労感や憂うつをへらす。
  • アルコールやカフェインをひかえる→アルコールやカフェインは神経が過敏になりやすく、不眠やイライラの原因になります。
  • 塩分の多い食品(インスタント食品など)をさける→塩分の過剰摂取により水分が体に溜まりむくみやすくなります。
  • イソフラボン、ビタミンB6や亜鉛、鉄、マグネシウム、カルシウムなどを摂取する。→これらの食品、ビタミン、ミネラルには神経をおちつかせる働きがあります。これらを含む食品を意識し、特に野菜などはたっぷり摂りましょう。

血行をよくする

下腹痛、腰痛、頭痛などには血行の悪さが影響します。積極的にからだを動かすことが大切です。
運動はイライラ、憂うつなどの気分を解消するのにも役立ちます。ウォーキングや水泳、ストレッチなどがよいでしょう。ただし無理は禁物です。適度に楽しくやりましょう。

受動喫煙を含めタバコや血流を悪くします。禁煙を心がけましょう。
また、ぬるめのお湯で半身浴をじっくりすることもお勧めします。

自分にあったリラックス法を見つける

運動やストレッチに加え、読書、ヨガ、呼吸法、アロマテラピー、ハーブティ、マッサージ、好きな音楽を聴くこと、ペットと過ごすこと、気の許せる友達や家族と話しをするなど、ご自身にあったリラックス法を見つけましょう。

薬物療法

これらの方法で改善が不十分な場合、それぞれの症状について薬物療法も行われます。

頭痛、腹痛→鎮痛剤,抗うつ薬,抗てんかん薬(バルプロ酸),漢方薬 など
むくみ→利尿剤,漢方薬 など
イライラ、抑うつ気分→抗不安薬,抗うつ薬(SSRI),抗精神病薬,抗てんかん薬(バルプロ酸),漢方薬 など

低用量ピル

詳細な機序は明らかになっていませんが、PMSは排卵後に分泌される黄体ホルモンの影響によって起こると考えられます。そのため低用量ピルを服用して排卵を抑制するとほとんどのPMS症状は軽くなります。また月経痛・月経量の減少の効果もあります。(※当院では、処方していません。ご希望の方は婦人科にご相談ください。)

月経前不快気分障害(PMDD)

月経前不快気分障害(PMDD)は、月経がある女性の約5%に見られる症状で、月経前症候群(PMS)の中で、特にこころの症状が強いものを指します。

PMSとのもっとも大きな違いは、より気分の変動が激しく、日常生活が困難な状態に陥るという点です。主な症状は、自己尊重の低下、意欲の喪失、重度の抑うつ状態、絶望感などですが、自分の感情の制御ができず、涙が止まらなくなり、他人に対しての言動が攻撃的になります。これにより、相手に不快感を与えるだけでなく、自身も後悔や自責の念にかられて、さらに抑うつ気分が増すこともあります。

これらの症状は生理が始まると消え、生理が終わった後の1週間は全く見られず、普段と変わらない精神状態に戻るのが特徴です。

またPMDDの発症にはご本人の性格特性と心理社会的なストレスなども影響するといわれています。

正義感や責任感が強い人、まじめで几帳面・完璧主義、頼まれるとイヤといえない人、他人に対して気を遣いすぎる人が周囲の期待に応えようとして無理をしたり、細やかな心配りで気を遣い過ぎたりする女性に多く発症する傾向があります。

家庭、職場、コミュニティーでの対人関係のストレス、本人や家族の大きな病気、肉親やペットとの死別、試験や就職の失敗、ひとり暮らし、結婚、出産、転勤、転居など、人生の中で大きな出来事もきっかけとなります。

PMDDは月経前困難症(生理痛)やPMSとは違って、海外ではうつ病性障害に分類され、うつ病の一種と認識されており、心療内科・精神科での治療が必要となります。一般にPMDDに対して効果があるとされている薬剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ薬です。SSRIはうつ病のほかにも、社会不安障害やパニック障害、片頭痛、痛みの治療などにも用いられていますが、副作用として吐き気、嘔吐、下痢などの消化器官症状、眠気、不眠、イライラ感、性機能不全などがあります。

症状のある期間以外も薬を飲み続ける継続的療法と、症状が出ているときまたは、生理前の症状が出ると予想される期間だけ薬を飲む間欠的療法があります。間欠的療法から開始し、効果が上がらない場合は継続的療法で症状が緩和されることがあります。またSSRIにも複数の種類があり、ひとつの薬で効果がなくても別の薬が効くこともあります。SSRIだけでは効果が不十分な場合、他の系統の薬剤の併用により効果の得られる場合があります。

PMDDでは症状が出なくなってから、1年程度は予防的に薬を飲み続けたほうがよいとされています。また症状がなくなっても、大きなライフイベントやストレスの増加などによって、再発することがあります。症状のコントロール方法を学び、対処能力をあげるため、薬物療法にカウンセリングを併用することもあります。

診療予約