強迫性障害

強迫性障害

強迫性障害とは

かつては強迫神経症と呼ばれてきましたが、この障害の特徴は「強迫観念」と「強迫行為(儀式的行為)」です。強迫観念とは、自分でもばかばかしい、理屈に合わないと分かっている考えやイメージ、衝動が、押えつけようとしても繰り返しわき起こってくるものです。また強迫行為とは、手を洗ったり、物事を確かめたりする特定の行為を繰り返し行うものです。
強迫観念・強迫行為のために長い時間を浪費し、これらが起こりそうな場面を避けるために家に閉じこもったり、物に触れられなくなったりすることから、生活に著しい支障が生じます。人口の2%前後にみられ、比較的若い10代、20代で発症することが知られています。気質的に、こだわりが強く、身体感覚に過敏性をもつような人が、強迫的な親に育てられる環境、間違えられない細かな作業を求められるような状況におかれると発症しやすく、また比較的学歴の高い人に発症する傾向があります。

強迫性障害の症状

強迫観念の内容,強迫行為の種類にはさまざまなものがあります。
もっとも一般的に知られているのは、排泄物の汚れなどが広がってしまうという観念にとらわれ、長時間手を洗うことが止められない「不潔恐怖に基づく洗浄強迫」、スイッチを切ったかどうか、鍵を掛けたかどうかなどが気になり、くりかえし確かめてしまう「確認強迫」です。何もしなければ洗ったり確かめたりする必要がないので、外出しなくなり、トイレ・入浴・着替えもせず寝たきりになることもあります。
このほかにも、何度も足踏みをしてからでないとトイレに入れない、神社に右側から入ればいいが左側から入ると悪いことが起こるという考えにとらわれ、間違えると入り直したりするといった儀式的行為もしばしばみられます。新聞の広告やカタログなども、「ひょっとして捨てた後で必要になるのではないか」と気になって捨てられず、部屋が一杯になることもみられます。また、服装が似合っているか、持ち物が適切か気がかりで動けなくなり、場合によっては出かける約束をしてから実際に外出できるまでに数日かかる人もいます。行動が非常に緩慢で時間がかかっているように見えるため、「強迫性緩慢」と呼ばれます。
このように、強迫性障害では、特定の観念・行為にこだわり、極端にコントロールがきかなくなり、日常生活に大きな支障を生じてしまいます。ばかばかしいとわかっていながら、自分の考え・行為を本人自身がコントロールできないので、苦しくつらい病気です。何時間もかかる手洗いなどの行為を、家族が無理に止めさせようとしたり、家族が本人の代わりに洗ってやるなどして、家族が巻き込まれることもしばしば起こります。

強迫性障害の治療

強迫性障害の治療には、薬物療法、認知行動療法、支持的精神療法、カウンセリングなどがあります。通常は薬物療法を行いながら症状の緩和を図り、必要に応じて他の治療法を組み合わせていきます。
薬物療法では、古典的にはクロミプラミンという抗うつ薬が使用されてきましたが、新しいタイプの抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込阻害薬(SSRI:Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)を十分量使用することにより、効果のあることが分かっています。ただし、抗うつ薬に反応する患者でも完全寛解に至ることは少なく,薬剤だけでは部分的な改善にとどまることがほとんどです。
行動療法では曝露療法(エクスポージャー)と儀式妨害が多く用いられます。これは強迫観念や強迫行為のきっかけとなる刺激を特定し,その刺激に意図的に十分な時間触れるようにし,その間やその後しばらくの間の強迫行為や儀式,回避行動を行わないようにするものです。
強迫性障害では、薬物を中断した場合の再発率がパニック障害やうつ病より高いため、長期の維持療法が必要になります。また薬物療法や行動療法を行っても,多少症状が残る場合が多く、外来通院を継続し、服薬を続けている患者さんに対して支持的精神療法や適切なカウンセリングを行い,強迫性障害とつきあいながら生活を楽しめるように援助する必要があります。

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