睡眠関連運動障害(レストレスレッグズ症候群・周期性四肢運動障害)

睡眠関連運動障害

むずむず足症候群(下肢静止不能症候群)

むずむず脚症候群(restless legs syndrome)は神経の病気であり、かつ感覚運動性の障害です。下肢を動かしたいという強い衝動感を訴えます。この動かしたいという衝動と共に、不快感から痛みまで、さまざまな異常感覚が認められる。歩いたり、さすったり、下肢を動かすと一時的にあるいは部分的に楽になることが多いとされます。

症状は夕方から夜にかけて発症あるいは増悪し、朝には軽快します。このため入眠ができなくなるか、中途覚醒後に寝なおせなくなります。また、睡眠中や休息中の覚醒時に周期性四肢運動を認めることがあります。

むずむず足症候群の頻度は日本で人口の3-4%、20から50人に1人で、女性が男性の1.5倍となっています。40歳代以上の中高年で急激に増加し、年齢が高くなるほど増加していく傾向があります。多くはありませんが、小児や児童でもむずむず脚症候群になることがあり、学校の授業に集中できないなど日常生活に影響が出る場合もあります。

診断

むずむず脚症候群は、通常問診をもとに診断されます。他の病気との鑑別では血液検査を実施し、鉄欠乏の状態(一部の患者さんでは鉄欠乏が原因で発症)や腎障害、尿毒症などの有無を調べます。また補助検査として、一泊入院して受ける「終夜睡眠ポリグラフ検査」や、下肢制止検査、家庭環境で実施できる「アクチグラフ検査」などがあり、睡眠の深さや持続時間、周期性四肢運動障害の有無などを調べることがあります。

次の4つの症状をすべて満たし、他の睡眠障害が否定されたときむずむず脚症候群と診断されます。

  1. 脚を動かしたいという強い欲求が不快な下肢の異常感覚に伴って、あるいは異常感覚が原因となって起こる 脚の不快な感覚は、「ほてる」「虫が這う」「痛い」「かゆい」などさまざまな言葉で表現され、その感覚は脚の表面ではなく、奥のほうに感じます。また、脚を動かしたいという強い欲求にかられます。
  2. その異常感覚が、安静にして、静かに横になったり座ったりしている状態で始まる、あるいは増悪する むずむず脚症候群の症状は、ゆっくり座っている時や横になっている時にあらわれたり、強まったりします。また、じっとしていても仕事や趣味などに集中している時は、症状があらわれにくいことがわかっています。
  3. その異常感覚は運動によって改善する  脚をこすり合わせたり、さする、たたく、足踏みをする、ひどい場合は歩き回るといった「脚を動かす」ことで、症状が軽くなったり消失します。
  4. その異常感覚が、日中より夕方・夜間に増強する  症状は通常、夕方から夜間にかけて出現し、強まります。とくに夜寝る時に現れやすいため、不眠の原因にもなります。病気が進行すると、昼間にも症状がみられることがあります。

主な補助的検査
むずむず脚症候群の患者さんが訴える脚の不快な感覚はさまざまで、他の睡眠障害との区別が難しい場合があります。その鑑別のために、次のような検査が行われることがあります。
終夜睡眠ポリグラフ検査
睡眠中の脳波、眼球や筋肉の動きなどを調べます。むずむず脚症候群の患者さんの7~8割の人では、睡眠中に足首やひざの関節が無意識に動く周期性四肢運動を合併すると言われています。この検査では、1泊して睡眠時の周期性四肢運動の程度、睡眠の質や量を総合的に確かめます。

下肢静止検査
下肢に筋電計をつなぎ、夜間の60分間、座椅子にゆっくり座り目覚めている状態で、周期性四肢運動の有無、程度などを調べます。

アクチグラフ
体動が記録できる活動量系(アクチグラフ)を手首または足首に腕時計のようなバンドで装着して四肢の動きを調べます。日常生活の中で長時間測定でき、睡眠時と覚醒時の両方の周期性四肢運動を測定できます。

治療

生活習慣の見直し
次のような生活習慣の見直しや工夫を行うことで、症状が改善することがあります。
カフェインを含む飲料やアルコール、タバコは症状を悪化させ、睡眠にも悪い影響を及ぼします。とくに夕方以降は、カフェインの摂取を避けることが望ましい。
適度な運動(ウォーキングやストレッチなど)を心がけること。
健康的でバランスの取れた食事で、体調を常に良好に保つようにしましょう。とくに鉄分不足には注意が必要です。
就寝前に短時間歩く、温かいお風呂に入ったり冷たいシャワーを浴びたりする、筋肉のマッサージをすることも効果的です。
座っている時には、会話やゲームなどの趣味をするなど、自分なりに集中・熱中できることを見つけて、症状から注意をそらす工夫も効果が期待できます。

薬物治療
生活習慣を見直してもあまり症状が改善しない場合は、薬物療法を行います。現在、むずむず脚症候群の症状を和らげる薬はいくつかありますが、これらの薬の服用により、症状の改善が期待できます。
また、既に服用している薬があり、症状が改善しにくい場合は、薬の量や種類を変えたり、複数の薬を併用することで、症状が改善することもあります。

むずむず脚症候群の治療は、通常長期にわたります。症状が改善したからといって、勝手に服薬をやめないことも大切です。急に服薬をやめると、症状が悪化したりすることもあります。規則正しく服薬し、体調が思わしくない時、症状に変化があった時には、医師に伝えるようにしてください。

また周期性四肢運動障害では、睡眠中に手や足の筋肉が瞬間的に収縮し、眠りが中断されます。この睡眠障害は高齢の女性に比較的多くみられ、これらの症状により、日中の眠気が強く、家事や仕事に集中できないなど日常生活に大きな支障を来たすことがあります。

周期性四肢運動に対して保険適応を持つ薬剤はありませんが、合併する他の睡眠障害に対してドーパミン作動薬や抗てんかん薬が用いられています。

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