不安障害

不安障害は、過剰な不安・恐怖によって苦しみ、生活に支障をきたす疾患の総称になります。

不安障害は大きな概念であり、

  • パニック障害
  • 広場恐怖症
  • 社会不安障害
  • 限局性恐怖症(閉所恐怖症、高所恐怖症など)
  • 全般性不安障害

は「不安障害」に属する疾患になります。

  • 不安は、漠然とした特定の対象がない恐れの感情
  • 恐怖は、はっきりとした外的対象のある恐れの感情

とされています。

不安障害の原因

不安自体は、危険を回避し、生命を維持するために必要な警報装置の役割をもっています。
不安障害の原因について、完全には解明されていませんが、神経伝達物質のバランスの乱れ(特にセロトニン系)に起因する脳と神経系の誤作動、自律神経系の過活動と考えられています。

不安障害の治療法

「不安」の治療は、「うつ」の治療と共通する部分が多く、薬物療法と認知行動療法や行動療法(暴露療法)などが行われます。通常これらを併用して行いますが、単独で行うこともあります。当院では薬物療法に加えて、カウンセリングの枠組みで認知行動療法、暴露療法、マインドフルネスなどを行っています。

薬物療法

薬物療法は不安感情を抑えることを目的とし、学校や職場を避ける等の回避行動を減らし、不安時の身体的症状の緩和を図ります。抗うつ薬(SSRIなど)、抗不安薬、抗精神病薬、βブロッカーなどが用いられています。

【選択的セロトニン再取り込阻害薬:SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor)】
様々な状況で強い不安を感じてしまう不安障害の治療には、抗うつ作用と抗不安作用をもつSSRIが用いられています。不安障害の原因として、神経伝達物質であるセロトニンの放出バランスが崩れていることが考えられています。SSRIは、一旦放出されたセロトニンが、もとの神経細胞に再取り込みされることを防ぐことで、神経細胞間の遊離セロトニン量を増加させ、セロトニン神経系のバランスを保つ薬剤です。

【ベンゾジアゼピン系抗不安薬】
SSRIに比べて即効性があるため、SSRIの効果が現れるまでの間に用いられます。また筋弛緩作用もあり、強い不安に基づく身体症状に対しても用いられます。長期に使用すると依存、耐性の問題を生じる可能性があるため、漫然と長期に使用しないことが重要とされています。

【β遮断薬】
不安の結果生じる震えや心拍数の増加、発汗などの身体の反応は、ノルアドレナリンが交感神経を刺激して生じます。これはノルアドレナリンβ受容体を塞いでその反応を抑える薬です。本来は高血圧症などに用いられる循環器系の薬剤ですが、動悸などの症状に対して、頓服薬として使用されることがあります。喘息のある人では、喘息の症状を悪化させるため使用できません。

薬物療法以外の治療法

薬以外の治療法として「認知療法」と「行動療法」を組み合わせた認知行動療法や、日本で生まれた「森田療法」、「マインドフルネス」などがあります。

また生活習慣を整えて適切な睡眠を取ること、発作を誘発する場合はカフェインやアルコールの摂取を避けること、運動や自律神経を整えるトレーニング、環境調整などによりストレスを生じている原因を取り除くことも重要となります。

認知療法

不安な気持ちが起こるメカニズムを学習し、自らに不安感を引き起こしてしまう誤った認知パターンを修正できるようにするのが「認知療法」です。「なぜ、人前に出ると恥ずかしく不安になるのか」というメカニズムを勉強しながら、周囲の人の目や自分の能力を再認識し、不安が発生していた状況の認知を改めます。同時に呼吸法やリラックス法、上手な話し方等、不安状況への対処法も合わせて学習していきます。

行動療法(暴露療法)

不安が生まれる状況にあえて飛び込んで、刺激に身を曝す「曝露療法<エクスポージャー>」を行います。 不安症状を生む状況にあえて飛び込む治療に際しては、唐突に刺激の強い状況に身を投じるのではなく、段階的な目標に沿って、徐々に身を慣らしていき、不安症状を改善していきます。不安障害の場合は、認知療法と行動療法を組み合わせて個人やグループで行う「認知行動療法(CBT)」が広く行われています。

森田療法

森田療法(森田正馬氏が1920年ごろ創始)では、不安や恐怖は自然な感情であり、よりよく生きたいという欲望と表裏一体のものと理解します。したがって不安は無理に排除しようとせずに「あるがまま」におき、不安の裏にある向上発展欲を生かして建設的な生活を営むことを目指します。そうすることによって症状へのとらわれから脱することができるのです。森田療法は入院治療が基本ですが、外来指導も行われています。

マインドフルネス

マインドフルネスとは、瞑想を通じて意識的にその瞬間の自分を感じ、“今ここ”を生きる習慣をつけるエクササイズです。目的とするのは「過去でも未来でもない、今まさに立ち現われている自分や他者をありのままに捉えること」で森田療法と通じるところがあります。このトレーニングにより、こころやからだのバランスが崩れた状態をニュートラルに戻し、「不安」に振り回されることが減って行きます。このトレーニングは「うつ」に対しても効果があることが知られています。

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