統合失調症とは
これまでの多くの研究から、統合失調症はどの人種・民族においても男女の差はなく、ほぼ100人に1人の割合で発症することが分かっています。好発年齢は10代後半から30代とされ、比較的頻度の高い疾患にもかかわらず、昔からの偏見や、疾患に対する理解の不足から”不治の病””怖い病気”と思われがちです。最近では新規抗精神病薬を中心とした薬物療法や、心理社会的リハビリテーションなどにより、症状の改善が期待でき、治療を続けながら就職、結婚して、通常の社会生活を送る方も増えています。
統合失調症の代表的な症状
統合失調症では、大きく分けて、陽性症状、陰性症状、気分症状、認知機能障害の4つの群の症状がみられます。どのような症状が、どれだけ現れるかについては個人差が非常に大きく、これらの症状によって薬剤の使い分けもなされています。また長年にわたって激しい症状が持続し、長期間の入院を余儀なくされる人から、わずかな陰性症状を認めるだけという人まで、その重症度、社会生活への支障の程度も大きく異なります。現在では、早期発見、早期治療により、社会的な機能を含めて長期的な予後が改善する疾患と考えられています。
陽性症状
発症していない人には生じない症状が現れることです。
- 幻覚:患者さんを批判したり、責めたりする内容を中心とする幻聴、不気味なものなどが見える幻視、温痛覚や皮膚の異常感覚といった体感幻覚などが代表的です。
- 妄想:被害関係妄想、注察妄想、被毒妄想などのほか、誇大妄想や自らが皇族であるといった血統妄想などもみられます。
- 著しい不穏・興奮など
- 思考のまとまりの悪さや支離滅裂な会話
陰性症状
健康な状態では存在する機能が低下し、場合によっては失われてしまうことです。陽性症状によるダメージの後遺症とも考えられています。
- 感情鈍麻:感情が湧きにくくなり、他人の感情にも気づけず、誤解が多くなります。
- 興味・意欲の喪失:身だしなみや衛生面に気を使えず、趣味や食事にも無関心になる。
- 無為・自閉:自宅や自室に引きこもり、他者との交流が少なくなります。
気分症状
- 抑うつ気分
- 不安感
- 気分の高揚~易怒性
認知機能障害
- 学習と記憶の障害
- 実行機能に関する障害(問題解決や抽象的な概念の利用ができない)
- 注意集中に関する障害
認知機能障害は統合失調症の中核をなす障害であり、発症前から徐々に出現し、自立した生活、職業的な機能へ及ぼす影響は大きいと考えられています。
統合失調症の治療
統合失調症が早期で、軽症の場合は、外来で薬物療法を継続することにより通常の生活を保つことができます。また症状が強く、自宅での生活が困難な場合には入院治療を行いますが、新しい薬剤の開発など治療の進歩や心理社会的リハビリテーションと組み合わせることにより、短期間の入院期間で治癒や軽度の障害を残すのみとなるなどの良好な転帰をたどる人も増えています。脳へのダメージを最小にするため、できるだけ早期に治療を開始し、再発させないことが重要と考えられています。
薬物療法
統合失調症の症状を軽減し、状態を改善するために抗精神病薬や抗不安薬、気分安定化薬、睡眠薬などが用いられます。激しい陽性症状の後に抑うつ状態を呈する場合もあるので、抗うつ薬が使用されることもあります。十分に改善しないうちに服薬を中断したり、不適切に減薬すると、症状の悪化や副作用を引き起こす危険性があるため医師と相談しながら一定期間、飲み続けることが大切です。一般に、初発の場合は1年程度、2回目以上の場合は症状がなくなってから5年程度、治療を継続することが望ましいとされています。
安静(外的な刺激を避けること)
急性期で激しい症状が出現しているときには、薬物療法が不可欠ですが、これに加えて安静を保ち、休息をとることも重要となります。病的体験が活発で通常の生活が困難な場合や、外部からの刺激を遮断することが望ましい場合などには、患者さんや周りの方の安全を確保するために入院治療も選択されます。
心理社会的リハビリテーション
意欲の低下や自閉傾向などにより外出することが困難であったり、対人関係に強い不安を抱く方もいます。こうした場合、入所型や通所型の施設で心理社会的リハビリテーションを利用した症状を改善するためのプログラムが行われます。またさらに進んで自立した生活を送るためのプログラムや就労支援のためのプログラムなども行われています。最近では民間の事業所も増えており、症状の改善だけでなく社会復帰を目的として、さまざまなプログラムが利用できるようになっています。