レム睡眠行動障害(睡眠時随伴症)
睡眠の経過中におこる心身機能の異常を睡眠時随伴症と呼びます。
覚醒の障害としては錯乱性覚醒、睡眠時遊行症、夜驚症が、睡眠・覚醒移行障害としては律動性運動障害、睡眠時ひきつけ、寝言、夜間下肢こむらがえりなどがあります。またレム睡眠期に随伴する障害としては、悪夢障害、睡眠麻痺、レム睡眠行動障害などがあります。その他の睡眠時随伴症としては、歯ぎしり、夜尿、いびき、発作性ジストニア、夜間突然死症候群などがあります。
以下に、行動面での異常を伴う代表的な3つの疾患を挙げます。
1.レム睡眠行動障害(REM sleep behavior disorder)
老人に多く、夜間睡眠中に異常な行動がみられる状態で、通常は恐ろしい幻視・幻触と興奮・多動を伴います。睡眠ポリグラフ検査により筋肉の緊張消失の見られないレム睡眠期(stage 1-REM,REM without muscle atonia)の見られることが特徴的です。
中高年以降に発症することが多く、レビー小体型認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患との関連が高いことが知られています。
激しい動きで本人や一緒に寝ている家族が怪我をすることもあります。こうした場合や、睡眠が著しく妨げられて眠気により日常生活に大きな支障がでる場合、異常行動を押さえるクロナゼパム、漢方薬、メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン:ロゼレム®)などの薬剤による治療を行います。
2.睡眠時遊行症(Sleep-walking disorder)
夢中遊行症(Somnambulism)とも呼ばれます。深い睡眠中に突然ベッドから起き上がり、数分から30分間ほど歩き回ります。この間障害物は避け、ドアを開けたり、一見目的がある様に見えますが、患者は目がすわり、うつろな表情で、周囲の人が止めようとしたり、話し掛けたりしても、反応が極めて乏しいか、はっきり覚醒させることが非常に困難です。翌朝目覚めた時、本人は夢中遊行についての記憶がありません。小児に多い病気です。
3.夜驚症(Pavor nocturnus, nocturnal terror)
夜間、深い睡眠中に突然恐怖の叫び声をあげて起き上がり、強い不安、体動、頻脈、呼吸促迫、発汗など自律神経系の興奮を示します。数分間は周囲に対する反応が極めて乏しく、失見当識と保続的な動作がみられます。覚醒後夜驚体験の内容はごく断片的にしか記憶していません。小児に多い疾患です。小児期にみられる睡眠時随伴症は、成長とともに自然に改善することが多い疾患ですが、症状が強い場合は、薬物療法を行うことがあります。